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ACCN活動レポート 日本キャリア・カウンセリング学会 第30回記念大会 自主シンポジウム「協力企業も支える人も本人も ―"三方よし"のキャリコンインターンシップ物語―」

2025.12.15ACCN全体の活動紹介

112223日に開催された「日本キャリア・カウンセリング学会 第30回記念大会」(池袋・帝京平成大学)にて、ACCN22日に自主シンポジウムを実施し、ACCN実践型訓練開発事業の一つであるインターンシップの取り組みについて発表しました。当日はACCN会員をはじめ、キャリア支援に関わる多くの皆さまにご参加いただき、オンライン配信もされました。
90分のシンポジウムでは、協力企業・ファシリテーター・インターン生が登壇し、"三方よし"をキーワードとして、実践を通じたキャリアコンサルタントの成長支援について多角的に語り合いました。
本ページでは、その日の様子をレポートとしてまとめています。
初めて本取り組みを知る方にも、会場の空気感や対話の深まりが少しでも伝われば幸いです。
(※当日投影したレジュメの一部は、会員マイページ「ACCNからのお知らせ」【 ACCN 通信 】 2025/12/16号よりご覧いただけます)


◇開催日 20251122日(土)11:0012:30

◇登壇者
 協力企業 / 田村輝美氏 ( ㈱ユナイテッドアローズ 人事本部人材開発部 ) 
 ファシリテーター / 仁平幸子氏、堀口恵子氏、竹内雅彦氏
 参加者(インターンシップ生) / 城戸貴子氏、冨永誠氏
 モデレーター: 小倉 浩靖 氏 (ACCN実践型訓練開発委員会 委員)
 ACCN事務局:山本、中林
 広報担当:ACCN事務局 佐藤

◇活動概要
本自主シンポジウムでは、ACCNが取り組む実践型訓練開発事業の一つである「キャリアコンサルタント・インターンシップ」の概要と実践状況、協力企業・ファシリテーター・参加者それぞれの立場から、"三方よし"のあり方についてそれぞれの立ち位置から、実践現場における経験やこの取り組みに対する想いを共有する、"ここでしか生まれない"臨場感のある対話の場となりました。


ACCNインターンシップ概要 実施の背景と目的

国家資格キャリアコンサルタント取得者からは 、これまでも「資格は取ったが実践の場がない」「何をしてよいか分からない」「自信が持てない」 といった声が多く寄せられてきました。
ACCNではこうした課題に対し、実践を通してキャリアコンサルタントとしての自分を具体的にイメージし、自律的に行動できる存在へとつながる学びが必要であると考え、実践型訓練開発委員会を設立し、3年前からACCNインターンシップの取り組みを行っています。企画の基盤には「経験学習モデル」があり、体験、観察、振り返り、概念化、実践を循環させながら成長を促す設計となっています。


ACCNインターンシップの構造

ACCNインターンシップは、面談実施、企業内ワークショップの見学、キャリア関連イベントでのサブファシリテータ等、多岐にわたりますが、基本的には以下の流れで構成・実施されています。
 STEP1:実施前学習・トレーニング
 →STEP2:現場での体験・実践
  →STEP3:振り返り、報告会での会員との経験知の共有
その流れの中では単なる体験ではなく「学びとしての実践」を重ねていくプロセスが丁寧に設計されています。
今回の自主シンポジウムで発表したACCNインターンシップは、企業におけるセルフキャリアドック施策の一環として、社員の方の面談を担当させていただきました。業界研究や企業理解から始まり、面談のトレーニング、実施報告書の作成に関することまでを学び合い、面談実施後にはSVを必須で受けるところまでという流れで実施しています。
トレーニングとSVを担当するファシリテーター竹内氏は、この挑戦を 「これまで木刀を握っていた方々が、真剣を握る機会」 と表現しました。資格試験用の15分間のロールプレイ経験しかないインターン生が、実際の5060分の面談に臨む緊張感。この"真剣を握る感覚"からの危機感こそが、主体的な学びや自主的な行動へとつながっていったと話します。インターンシップ生として参加した冨永氏は「自分に自信がないとは言っていられなく、面談の基本を勉強しなおした」そうです。


ディスカッション:「三方よし」とは何だろう登壇者(全体).JPG
「伴走する支援」そして「主体的な活動」へファシリテーターとインターンシップ生の"よし"とは?
ファシリテーターの仁平氏からは、インターンシップ生が直面するリアルな戸惑いと成長のプロセスが、率直な言葉で語られます。 試験用の15分間のロールプレイ経験から、実際の5060分の面談に臨むことへの不安や緊張に、多くのインターン生が「どう進めてよいのか分からない」と戸惑っていたとのこと。
それに対し、ファシリテーターは"指導する側"としてではなく、同じ目線で寄り添う者として関わることを一貫して大切にしてきたといいます。
指導する立場として導くのではなく、ともに考え、ともに振り返る関わりを重ねることで、インターン生自身が主体的に学び、自ら行動する力が育まれていき、インターン生同士が自主勉強会を立ち上げ、互いに学び合い、ネットワークを育みながら、繰り返し実践を重ねていく姿が生まれました。
ファシリテーターの3名は、このような、伴走型の育成に関わることで、実践現場で活躍するキャリアコンサルタント育成についてのベテランキャリアコンサルタントの姿勢を確認することになったと言います。
さらに、インターン生の城戸氏は、「できるできないではなく、とにかくやってみることで、得たものが多かった。何より自主勉強会を実施して、共に学ぶ仲間ができたことは本当に良かった。」と話します。さらに自費でスーパービジョンを受けた経験についても「この時間を最大限活かしたい」という思いで臨んだと言います。主体的な姿勢が一層強まり、学びの質が深まっていった様子が伝えられました。
インターン生の冨永氏は「インターンシップでの経験は、キャリアコンサルタントとして自信になった。その自信を持って、現在は、外部のキャリアコンサルタントとして企業に関わる仕事をしている」と力強く話します。
こうしたエピソードから、インターンシップが単なる訓練ではなく、当事者の内側から動機づけを育てるプロセスであることが、参加者にも深く伝わる場面となりました。

企業側にとっての「よし」

協力企業であるユナイテッドアローズ 人事部・田村氏からは、インターンシップを通じた具体的なメリットについて、企業側の実感として語られました。

・費用面において、現実的な負担で実施できていること
・勉強会の過程で、面談を担当するインターンシップ生に対し、自社のことを直接、自分たちの言葉で伝えられたこと
・勉強会で自社の事を理解しようとする姿勢、特に実際に店舗へ足を運ぶなど、企業を知ろうとする行動をしてくれていることを知り「ここまで学び、理解しようとしてくれている」という安心感につながり信頼感が高まったこと

こうしたプロセスを通じて田村氏は、「きちんと自社の事、社員の事を理解しようとする姿勢で面談に臨んでくれていると感じられ、安心につながった」と述べ、インターンシップが企業側にとっても価値ある取り組みとなっていることが紹介されました。
また、なぜACCNをパートナーに選んだのかという問いに対しては、 「事務局の方々の空気感が自分たちに合うなと思ったこと、話を丁寧に聴いてもらえたこと」 「企業の状況に合わせて柔軟にカスタマイズしてくれる姿勢」 を理由として挙げ、信頼に基づく関係性のもとで協働できていることが語られました。

実践を通して見えてきた「変わらない価値」

またファシリテーター堀口氏はこの3年間で、「変わったものもあれば、変わらないものもある」と語り、変わらないものは大きくは以下の2点だと話します。

 ・インターンシップ生の自主性を尊重すること
 ・個人支援を通して組織や職場を見る視点を育てること

若手育成の意義については、ファシリテーターの竹内氏から 「患者はベテラン医師に診てもらいたい。しかしベテランばかりでは若手は育たない」 という比喩が語られ、次世代キャリアコンサルタント育成の社会的意義が広い視点から示されました。


インターンシップ生のその後

第1回~9回までに参加したインターン生対象にその後についてのアンケートを実施いたしました。

・参加直後「期待以上・期待通り」:85.4%
1か月〜2年後の満足度:平均93.1%
・資格の有用感:参加前63% → 参加後88%
・参加者の具体的変化:「社内提案」「社外キャリアコンサルタントとしての活動」「学習への積極的参加」「自信の向上」「上位資格への挑戦」など、意識と行動の両面において確かな広がり

こうした事例から、このインターンシップが一過性の学びではなく、参加者の「その後」のキャリア形成に確実につながっていることが共有されました。


締めくくりに

最後にACCN事務局長・山本氏から 「キャリアコンサルタントのインターンシップは、その必要性は語られてきましたが、実施された例は少なかったと思います。 今回のお話はACCNでまずそれを"やってみた"ということです」との言葉がありました。そして 「これは完成形ではなく、現在も試行錯誤中です。 ここから、それぞれの場で新たな実践が生まれて、8万人を超えるキャリアコンサルタントの更なる活性化につながってほしいと願っています」 というメッセージで締めくくられました。
本シンポジウムは、実践の報告にとどまらず、学びを共有し、次の一歩へとつなぐ場となりました。ACCNのインターンシップは、キャリアコンサルタントの未来を育む一つの挑戦として、皆さまと一緒にこれからも進化を続けていければと考えています。

参加いただいた方からの感想(アンケートより抜粋)

●キャリアコンサルタントの自己研鑽を支援するNPO活動に携わっていますが、資格を取ったが経験できる場の提供がなかなかできない課題は同様に抱えていましたので、素晴らしい取り組みと思いました。

●キャリコン資格を、とって10年以上になりますがセルフキャリアドックになかなか携われません。スーパービジョンも受けられる貴重なステップも、ありぜひ参加してみたいと思いました

●インターンシップの取り組みは良い取り組みだと思います。キャリコン自身がキャリコンとして本当に活用して活動したいのか?プロとして活動していくのか?の意識変換が必要ではないかと思います。

●このインターンシップ事業は、キャリアコンサルティングの本質と、キャリアコンサルタントの質の向上を目指すACCNならこその活動だと感じました。もし会員になっていたら、自分も応募していたかもしれないと、非会員で数年過ごしてきたのを後悔しました。
ファシリテーターの方、インターンの方、ユナイテッドアローズの人事の方の、それぞれのお話を聞いたことは、日頃の自分の意識や行動を振り返る機会となりました。
組織で働くクライエントに向き合う上で、その所属企業について可能な限り調べ、想いを共有すること、また、面談はシステマチックアプローチに従い意図をもって進めることが大切であることを理解しました

以上


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